「 国境の南の柵 」2016年11月14日 20:04

「 国境の南の柵 」


国境に柵をつくるんだとそいつは吠えた
外からしのびこむ悪を閉め出そうと騒ぎ立て
内からにじみ出るものはけばけばしく飾りあげた
外側の罪の浄化を求めて人びとは喝采をもって応え
内側のものを深く深く埋め立てて各自の感傷に酔った
街角の街路灯のひとつひとつに邪悪な人影を吊るし
いくつかの言葉をそれに書きこみ蔑み唾棄し罵った
人びとは幾重に柵を並べ用意はできたぞと叫んだ
幸せの権利を購った暢気な日曜日の朝を味わおうと
それから気の遠くなるほどの時間をかけて
何重にも区切られ仕切られ切り取られた宣誓書を積み上げ
それぞれの憤怒と絶望を体系化し
それぞれの愛と憎しみのバランスシートを連結し
それぞれに異なる大きさと色の太陽と月を吊りさげて
それぞれにぬかづくべき偶像を配備して託宣をかかげ
尽きぬ争い収奪殺戮ゆすりたかりに自足した
かくして
幸せの希望をうたい暢気な日曜日の朝を繰り返すことで
人びとは暗黙のうなずきを交わし合った
そいつを頌める連中もののしる連中も
それぞれの柵につながれて結びあう夢は最高だった

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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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