「 十一月 」2016年11月08日 15:23

「 十一月 」


とざした窓、レース越しの戸外。
晩秋に近づく空はうすく曇ってひろがりわずかにひかっている。
通りの桜の梢が赤茶けてまばらになった葉を震わせている。
妻が近所の園芸店で買ってきた鉢植えのオリーブの枝が風にゆれる。
幼い幹や枝は栄養失調の細腕のようにたよりなく、
なににむかってか、おいでおいでと揺れている。

ぼくは寒い光を受けとめる。
ぼくは伸びる、伸びてゆく。
伸びてゆくことがぼくの意志。
このようにしてぼくは空にぼくを送り届ける。

窓越しのささやかないのちのゆらぎ。
なんて無防備で純粋ないとなみ。
なんて寡黙で無欲ないきざま。
思い煩うことなんて
地をさまよう生き物だけがぶらさげる尻尾のようなもの。

ぼくはこうして光を受け入れる。
ぼくはぼくのなかに光をたくわえる。
ぼくは光を生き今を生きる。
だから、ぼくのところへおいで。
優しい語らいのつかのまのかたち。
おいでおいでと。

窓はわたしを遮えぎっている。
わたしは閉じた窓のうちがわに座している。
わたしの窓からはなにもみえない。
わたしのしっぽは重すぎる。


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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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