詩という隘路

　　知っていなければ
　　それは存在しないこと
　　あなたがあなたを知っていなければ
　　あなたは存在しないということ


　　あなたが知らないあなたは
　　そのとき
　　どこに失われているのです
　　あなたという他者に委ねられたあなた


　　わたしにはそのさまがよくわかる
　　わたしにはそのかたちがよくみえる
　　あなたはわたし
　　わたしこそがあなたなのだから


　　ゆくえを知らぬあなたを
　　何枚も貼りあわせて
　　できあがっているのがわたし
　　できあがっていないのがあなた


　　つまりあなたがあなたを知らない分量だけ
　　わたしはそこに貼りあわされてあるのです
　　そのことの正しさを明かすことはできませんが
　　そのことが正しいと受け入れることは可能なはず


　　わたしはあなたを失ったあなたであれば
　　あなたはわたしにとどまるほかないのです
　　わたしははわたしであるために
　　あなたを回収しつづけるほかないのです


　　そして多分
　　あなたは
　　わたしがわたしを知らない数だけ貼りめぐらされた
　　わたしでありつづけるのです


　　どうかあなた
　　わたしをきっとよろしくお願いします
　　わたしはかならずあなたを
　　みつけたいと願いつづけるでしょう


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