「 コンコースにて 」2018年01月29日 09:32



中央駅 早朝のコンコース
はや途切れなく行き交うビジネスマンや旅行者
ベンチから彼らを 
彼らの表情を見つめるのが好き
とめどなく流れる場内アナウンスにうながされるように
人々のたずきがあわただしく行き交う
どこからどこへ どこからどこへ


それぞれの意図があり
それぞれの目的があり
自らに起因するものしないもの
自らに逢着するものしないもの
そのひとつの瞳は薄もやがかかり
そのひとつの唇は繻子におおわれ
そのひとつの耳は針葉樹であふれ


なぜここであって なぜあそこではないか
そんな詮方ない問いをのみ込んで歩行は止まず
いまはあやまちなく進むべき行き先を確保し
身を委ねるべき乗り物に身を割いて
そのひとつの面差しは頼りなげであり
そのひとつの項(うなじ)は寂しげであり
そのひとつの頬はいずこか遠方にあり


互いが互いの視野をかすめてゆく
あなたはわたしであり
わたしはあなたである
だがたがいに交わすことばを知らず
あなたはあなたに 
わたしはわたしに
いずれ達する未知であるとわかる


そのコンコース
早朝の雑沓に踏み残されてゆく時間
無防備な表情にこぼれていく無数の物語
ぼくはそれを見つめるのが好き
セレブも貧者も 勝ち犬も負け犬も
行く先を知らず 行く先に心迷う
その敬虔なもうひとつの旅が
ささやかなしるしとなっているようで



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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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