「 雑 踏 」2016年12月30日 08:33

「 雑 踏 」


雑踏のなかで

ひとりなにやらつぶやいている

行き交う人々の流れにむかって

流れの慌ただしい瀬音にむかって

ところどころうまれる渦にむかって

渦がのみこむ街の跫音にむかって

ひとりつぶやく男がいる

雑踏が落としていく

言葉に孵化しない思いが

美しく発光する街路樹にひっかかったままだ

つぶやく男

人々の壁にむかって

人々が織りなす淋しげな壁にむかって

閉ざすもの囲うもの切り立つもの妨げるもの

他者という壁という壁に

あれは話しかけているのではない

話しかけるという孤独に耐えられないから

ひとり

他者の沈黙に撲たれながら

なにやらつぶやいている

つぶやいている間だけ

壁に渦に流れにむかいあっていられるとでも

いいたげに

そこにいるあれは誰だ


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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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