「 かみさんの昔話 」2016年12月27日 12:23

「 かみさんの昔話 」



テレビをみながら何をおもったか
かみさんが昔話をはじめた
じつはかみさんとは同級生だ


要するにかみさんが言いたいことは
いかに彼女の方が賢いかということだ
彼女の家はそれほど豊かとはいえず
欲しかった参考書を買ってもらえなかった
それにひきかえ ぼくは彼女の欲しい本を買い与えられており
それでかみさんの知らないことを沢山知っていると思いこみ
彼女は秘かに嫉妬していたわけだ


中学生になって実力テストの結果発表があり
貼り出された成績順位表でかみさんのほうがぼくより上位にあって
なんだぁと思った・・・・・ というようなことを
思いだし思いだししゃべっている
小学生のときびっくりしていたあんたなんて
なんだぁ だったのね


かみさんの記憶力はすさまじい
ぼくはといえば右から左への人だ
集中力欠如 忘却の友 なにかにつけて希薄だ
どうにも賢さと縁を結ぶことができないように作られている


彼女は欲しいものが得られなかった口惜しさを 
当時のつましい暮らしを  
説明のつかない不合理を
胸にささったままの針を
突然思いだしたのだろうか
それではるか半世紀以上まえの腹立ちを
今になってぼくにぶっつけてきたにちがいない


冗談じゃない こっちは気分よくテレビを見ているんだ
卑怯者が 不意打ち抜き打ち出会い頭の切り捨て御免
しかも 今頃になってなんで敵に回されなきゃならん
女は執念深いというのか 時間差攻撃の達人というべきか 
ねたみの化け物 奇々怪々 謎のかたまり
魑魅魍魎 人面獣心と心得るべきか
こうした無法者には情け容赦ない鉄槌をくださなけりゃならん
そこで腹の中だけの半幕復讐劇を敢行


かみさんが言うには
彼女が知らないことをさも得意げにクラスで
エラソウに発表していたということだ
なるほど 他に先駆けて知ることの快感に
早くもぼくはたましいを売り飛ばしていたのだった


さて今頃になっての教訓だが
知っていることを分かち合おうなどとしてはならない 
あるいは少なくとも 勝ち誇ったように行ってはならない
知っていることでも知らないとしなければならない場合がある
知っていることはおそろしいことでもあると知らねばならない


人間のプライドとは安物のガラスの鎖のようなもので
そんな鎖を人間は引きずり引きずり生きているということ
しかも この鎖からは残念ながら死ぬまで自由になれない
そういう初歩的なことに注意しておかないと
のちのち夫婦げんかのもとになる
ということなんだ


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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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