詩という隘路

「 エネルギーしてるんだから 」


生きるということはエネルギーするということ
そんなことばなんか使わないなんて責めないでくれ
こんなことばでしか言いあらわしかたを知らない
つまりぼくは生きるということを
賢くエレガントにスマートにかっこう良く
そして何よりも間違わず正しく美しく表現する
能がないんだからなぁ


そんなぼくがしかも熟成させるなんてできやしないことがらを
軽々にたやすく抽象しているなんて責めないでくれ
それにぼくの身の回りにある具体的なもの　
つまり形象とか造型とか
一般名詞とか固有名詞とか形式名詞とか誰々さんとか
とても乏しくて疎遠で空しくて
まるで空気を撫でるような感触になる


それでぼくはつかみどころのない空気を泳ぎながら
まぁ　それなりにエネルギーしているというわけだ
毎朝通勤電車で猛烈にシェークされ　
のろいのことばを職場の椅子やトイレで嘔吐し
だれひとり集まらぬ抗議集会を抗議することもあり
結論だけが先走りするロマンにつきあわされれば
ぼくにどんな表現が許されてぼくを満たすことができただろう


それでぼくに可能な表現はおそまつなんだと納得するほかないけれど
じつはぼくはぼくのエネルギーの縦と横、そして奥行きの
寸法が少しわかりかけているんじゃないかと思ってるところがある
それはめまぐるしくプラスになったりマイナスになったりする
くぼんだりふくらんだり入れ子になったり一向におちつかない
もちろんそのことにうんざりもするんだが　いいんだよこれで
だってぼくはぼくにエネルギーしているんだから


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