「 愛 」2017年04月06日 08:22

  「愛」ということばをはじめて知ったのは
  いったいいつのことだったか
  おまえもたぶん憶えていないだろ

  それがいつであったにせよ
  初めての出会いはとても気恥ずかしく
  こころが妙にもぞもぞしたことだけを憶えている

  それからなんども「愛」ということばを用いたものだ
  用いれば用いるほどことばは痩せていった
  使いこめば使いこむほど正体はあやふやになっていった

  そのうちことばとはなぜか
  いつも遅れてやってくるのだと
  気づかされることになる

  後から追いついてことばははじめて
  その意味をあかしてくれる
  あかされた意味はひとそれぞれに異なるにしても

  もちろんなんだってそうだがことばにも
  例外というものはある
  遅れるどころがすべてを追い抜き先走るものはある

  先駆けて駆け込んでくるものはいつもきらびやかで艶やかだ
  先駆ける意義やありがたみをいかにも賑々しく喧伝するから
  遅れてやってくるものは大概みすぼらしくまぬけにみえる

  先行して騒々しく沸き返る世界の突端で
  つねに遅れてとまどうばかりの「愛」
  なんとも愚図なその姿をはかりかね

  いまでは「愛」ということばに出会っても
  こころはもぞとも騒がずに
  イミテーションあふれるアクセサリーボックスにほうりこむだけのこと

  無償の愛 無私の愛 融ける愛 繋がる愛 開く愛 閉じる愛
  遅れ遅れて意味をなんとも重たげに引きずってやってくる
  遅れ遅れて申し訳なさそうにちいさくその身を縮め

  それから待ちくたびれて誰もいなくなったふきさらしで
  その意味をあかしている 静かにゆっくりと問わず語りに
  あまえはなにも気づいてないだろう かけがえのない大いなる喪失を



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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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