「 読書の時間 」2017年04月12日 09:06


行き止まりになった時間を持て余し
分厚い小説のページを開けば 
おお なんと
勃起のさまやバギナのことばかりが著されている
他のオブジェを断念するほかなかった作者の鬱蒼とした欲望が
くりかえしくりかえし執拗に露出するから鼻白み加えて
各所の破綻がいやさらに気になりはじめると
次第に時間は硬直の度を増し
時間はもはや時間に寄り添えず
それは余剰の時間のほとりに切り捨てられ追いやられ淀み粘つき絡みあい
おのれのありさまにおいて自在を失いもっぱら己に憑依し
膨張は極限に達しはち切れんばかりにぎしぎしと不本意な軋みをたて
おのれからおのれを おのれからおのれを
放ち出さんともだえ時針を零時の方位めがけていきり立たせるのだが
硬化怒張する騒然たる律動におのれを同期させるも随意ならず
暗鬱のバギナめがけて延々と狂おしくも空しいピストン運動をあえぎ
あえぎ繰り返すも受胎不能のウテルスに刻みつけられる文字はただ
こばむ こばむ こばむ  の三文字三連弾
その生誕を拒絶する その生育を その成熟を その
希求やまぬ法悦を 許されてあるべき解き放ちを おまえの魂の放下を


それでもなんとしても分厚い小説に挑むのだ
しかし異様に分厚すぎて
読書はいっこうにはかどらず前にも後ろにも進もうとしない
時間は解読にうろたえすでに歩む方向を失い続けているのである
なにせ作者はなにひとつ極まり得ぬ事実ばかりをむなしく積みあげているのである
つまるところおのれが描こうとするものに頭の先から足の爪先まで
喰われてしまっているのである
読者は読者で凄愴たることの顛末に絡まれてたどる道を見失い
頼りなく途方に暮れるほかないのである
みてくれの情報に弄ばれて視野は狭窄し手もと昏く文字の判読ままならず
進退窮まり無残に残渣と化した文字のかたちにおいて
おのれの恥部のそして行為のあさましさを意地汚くも浮き立たせ
やがて惚けてそれ自身において弛緩するに至るのである
果たしてそれが小説であったのか あるいは
おのれの履歴書であったか 始末書だったか
今にいたれば次第にその正体怪しく
文字は文字で拒絶反応あらわに己を吐瀉し見苦しく痙攣する
もはや眼でたどれぬ文脈をそれでも縦走せんと勇を揮(フル)って己を叱咤し
今は萎縮するばかりのものを押し握りなお挑まんとする ああ
おれはいま何を読んでいるのかいつまで読み続けねばならないのか

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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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