「 無数のうちのひとつの夢 」2017年01月26日 09:30


「 無数のうちのひとつの夢 」


何も見えず何も聞こえない
いつものことだがいつ始まったのかわからない
見るためにはかたちが成されなければならない
聞くためには音像が拓かれなければならない
方位すら確かめようがないのでどちらを向いていればよいのかも
そのことすらわからない

手に触れるべきものがすでに手を求めないのである
足踏みすべききざはしは必ずぬけおちていくのである
明るみが満たされないのでどこにも色彩が誕生せず
睦びあうべきぬくもりがほどけたままに浮遊して
いつまでもいつまでもなにか流されている音がする
深いのか浅いの遠いのか近いのか どうもおかしい

それで もしかするとおれはすでに死んでいるのだろうかと訝しむ
しかし 死んでいるにはむやみに息苦しく
果てているには 刺草からむ悩ましさがまとわりつく
斃(たお)れているには なお切なく胸がふるえ
しかし 生きているにしてはいかにも正体なく
息吐くたびにぬけるぬける世界がとめどなくぬけでていく

閉じた扉を幾何級数的に増殖して勢いを止めようとしない街並み
視界一面行儀よくすまして整列している窓はなんのパスワードか
暗号処理化されてできあがったばかりの優しい人びとが頭上を仰げば
見よ!威嚇しながら覆い被さってくる天板の空 そこに登ろうと
死んでいるのか生きているのかはかりかねるおれにハーケンを打ち込む
驚きの悲鳴が どこか夢のすみっこに聞こえる気がしないでもない

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
わたしのブログタイトルは?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://si-airo.asablo.jp/blog/2017/01/26/8333948/tb

<< 2017/01 >>
01 02 03 04 05 06 07
08 09 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

このブログについて

つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

最近のコメント

最近のトラックバック

メッセージ

RSS