詩という隘路2015-041 「 小さな窓 」2015年10月03日 10:23

そこから見えるもの
街か 園庭か 荒れ野か  
不毛の砂丘か ぬめりの湿地か
あるいはむなしさ渦巻く穴ぼこだらけの小宇宙か   
その素顔を知るまえに 誰もが飛び込んでしまい
その正体を知るまえに ひとり残らず飛び出てしまう小さな窓  
その窓が所有する樹木のかたちひとつ
アホちゃうか と
小鳥が囀っている空色の籠の中
足もとにはおぼつかなく伸びる枝    
苦い果実がたわわに実り季節のかおりばかりが芳(カグワ)しい


ほんとうはもっと簡単なことなのに
自分自身をねじ曲げたぶんだけ己自身から遠ざけられて
いつも何かに分解されたがっている祈りをかかえこんでしまう
気ままほうだいに底のぬけた願いで自分をきりわけると
理由もわからずゆがみはじめる平行線に阻まれ
とんでもない啓示にでくわす予感先走り
窓枠に伸ばしている手は動きをとめる
なにがこわいのかとこころが反応すれば
あわてふためきヘッドフォンのプラグを差し込んで不揃いの音圧に懼れをなす
イースト菌のような嫌気性 ぼくらの存在 発酵のかたち


自在に歩行しているわけじゃないことはどんな赤ん坊にもわかること
単純な器官のつまった頸部の上と下とでそれぞれの歩行がくり返される
でも大切なことは経路じゃなく回帰すること いくども回帰しつくすこと
同じ入口から同じ出口が排出されて同じ出口から同じ入口がのみこまれてゆく
そのことがもっとも大切なこと
なぜなら ぼくらが外界であってぼくらが内界である真実の数だけ
偽りをくり返すぼくらは歩行にこめられた存在証明だ
鳥かごの半径ほどに開けられた換気口から
流れ出ているのか 流れ込んでいるのか
ぼくらは何を吸っているのか こんなにいがらっぽいものを


知らずにあることがいつかしら不安の火種を熾(オコ)す
不覚にもついに赫々と業火噴きあがる
発火する欲念 炎のみが識別する青い炎 ぐれんの炎 あわい紫のゆらぎ
焦げる赤銅色 藍や黄のまたたき それらおぼつかない炎色反応あわただしく
煮えたぎり融け落ち燃え尽き煤けるこころらしきもの
倒錯だらけのアフォリズムを組み立ててこの窓には把手がないのかといらつき
遮断開放の力学もままならず軋んでいれば
なにがセツナイんや と
羽ばたく小鳥の柔毛がやさしく舞いおちてくる
静かにもちあげればすなおに開く小窓のそばで

                   - (げ) 2015.10.01

     〈 詩という隘路 〉
     http://www.ne.jp/asahi/poem/ahodori/
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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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