「 日曜日 」2017年10月11日 09:32


 昨日までの不順な天候の
 朝から姿を翻して
 青一色の秋空がひろがる
 新聞には「寒露」
 今日が二十四節気十七番目にあたると記事にあった
 古代中国前漢武帝の頃には整えられていた暦法
 遠く二千年以上もさかのぼる季節へのおもい
 人間の時間の短さと長さのさまを青空にさぐる


 それにしても
 秋の行事を告げるにぎやかな歓声ひとつ聞こえない
 おだやかで静謐な陽気だけが屋外を這っていく
 その陽射しをあびながらぼくの大好きな詩を
 そらんじてみる

 
  『 何千万何億のお母さんがあらわれては消える。
     この地球の闇に
    何千万何億の父親がでてきてはきえる。この
     太陽の照っている荒地をよぎつて
    でたらめのできないかなしみに
    きちがいになれない不幸に
    人間どもが苦しんでいる 』  ※


 浮薄な雲が輝く空をさまよっているのを見あげる
 ちぎれたりのみこまれたり
 姿をうしなったりふざけてみたり
 そのさまをみて
 ああ どこに不幸や苦しみがあろうことかと 
 ひとりごつ
 おのれのかたちにこだわることをあきらめ
 おれのすがたの凝視を
 忘れ果てた不幸や苦しみは
 もはや不幸でも苦しみでもなく
 それは寒々とした露に身を変えて
 軽々と流れていく雲の
 無言の檻におしこめられるばかり


 静かな日曜日
 燦々と日火がくゆる
 せめて
 何千万何億の
 わたしたちのために
 布団を干し
 夢の汗を干し
 みつめるを忘れた
 瞳を干していよう


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   蔵原伸二郎 「認識の秋」より(後「しずかな秋」と改題)
      詩集 「乾いた道」(1954 作者55歳)所収

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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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