「 将軍の糸 」2017年09月15日 11:20



  かの将軍はかぎりなく孤独でござる
  持て余す権力と己の影に
  恐れ戦いて

  彼は同じことをやっているだけと
  同じものを求めているだけと
  一日中つぶやきやまぬ

  同じこと同じものとは
  何のこと
  彼自身また理解できかねる一人でござる

  夜の壁はますますそそり立ち
  防音防弾ガラス窓から覗く風景は
  雷光に美しくまたたき蒼白にたたずむも

  将軍と世界との間には
  なんらの必然性も当為なく
  偶発の無残な連鎖の忌々しい落とし子さ

  誰の目の周囲にない今でこそ
  彼の体は一層だらしなく垂れさがり
  総身浴びた血のにおいにも今さら気づかない

  もはや止められない いまさら止めようもない
  止まれば鮫のように
  ぶざまに死なねばならぬと思うはそればかり

  脅えはさらにつのるのみ
  誰一人信頼するに足りねばと
  呪詛のつぶやきはさらに隠微な執拗深め

  おお打ち上げる打ち上げる
  大玉ひとつの意地ひとつ
  その狂気のなんの色

  眠りまなこの闇夜は困惑戸惑うばかり
  夜鳴き鳥のかしましく
  漆黒の袋を狂うがごとくついばめば

  その騒ぎをいまいましげに
  しゃらくさい若造めがと魔王はみくだし睨み
  黄金の牙光らせ口臭ふりまいている

  だがごろうじよ将軍も魔王も三下も
  影絵のマリオネット
  燃えるも喪われるもおなじもの

  おなじ糸にあはれにつながれて
  悲しいドラマに打ち興じ
  誰かがのんきに文句をつけておる


              - 2017.09.15


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つれづれにしたためた作文を投稿させていただきます。本人は「詩」を書いているつもりですが,、恥ずかしながら「詩」とは何かがわかっているわけではありません。

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